封印せし記憶
下校


静菜が和弥に教室から拉致されるように連れ出された日から1週間。

それが発端。

その日以来、2人はなぜか真面目に学園へと通い、静菜は事あるごとに和弥の後ろをついてまわっている。

それが要因。


2人は付き合っていると、学園内ではもっぱらの噂。
しかも告白したのは、あの樋渡だと確信まで持たれている。
教室から静菜を連れ出したのだから自業自得。


そして当事者である静菜と和弥は間逆の反応。

静菜は相変わらずふわふわしていて頓着しない様子。
和弥はと言えば、自身を注視するような視線を感じたかと思うと、ひそひそと囁くように会話がなされることに、神経を逆撫で今にも噛み付いてしまいそうだ。

しかしそんな和弥に静菜がふわっと微笑み何事かを話しかけると、和弥は拍子抜けしたように溜息を吐く。
ほんの一瞬前まで怒り心頭といった雰囲気であったのに、それが嘘のように鳴りを潜めてしまうのだ。

それを見た生徒は目を丸くして2人を凝視する。
そしてやはり樋渡が朝日奈に惚れているのだと確信を強める生徒達なのだった。


和弥はそれが気にいらないようだったが、どうしても静菜が傍にいると苛立ちが掻き消えてしまうのだ。
こんな自分はおかしいと思いながらも、今の現状に不満があるわけでもないと思い至るがゆえに、ただ流されるようにこの1週間を過ごしていた。



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