封印せし記憶


そんな日々を過ごしていた2人ではあるが、和弥にいつも難癖をつけてくる他校生達の間にも、和弥に彼女が出来たという噂は広まってしまっていたようだ。


それは2人で下校している時のこと。
和弥の家は静菜と反対方向だったが、真っ直ぐ家に帰ることなどない和弥は、静菜の下校に付き合い、静菜がアパート近くまで帰り着くとそのまま自宅へと引き返して行くのだった。
その為、静菜は和也と帰るようになってからは、近道を使わなくなっていた。


「おいっ!樋渡っ!」

名前を呼ばれ、和弥が振り返るとそこには、ことあるごとに絡んでくる他校の生徒3人ほどがニタニタと嫌な笑みを浮かべながら、和弥のところへ歩いて来るところだった。

どう見ても柄の悪いとしか言いようのない3人。
金色に近い茶髪が2人。1人は黒地に赤のメッシュを入れている。
それに3人ともがいくつものピアスを開けていた。
口元や鼻にピアスをしている者もいる。
制服はこれでもかというほど着崩していて、完全に問題児扱いされる部類だ。


「……なんか用かよ」

和弥は即座に不愉快そうに顔を歪めて見せ、低い声でそう吐き捨てた。

「おまえに女が出来たって聞いたから見に来てやったんだよ。なぁ?」

右端の鼻ピアスをした少年がにやりと笑いながら、和弥を挑発するように言う。
そして同意を求めて横をチラリと見やると、2人はあぁと同時に頷いた。

「あぁ?頼んでねぇよ。つうか彼女じゃねぇ」
「どっちでもいいんだよ。こいつが最近、一緒にいる女ってあんたか?」

和弥の斜め後ろ辺りに立っていた静菜に視線を移して、まるでおもしろいものでも見るような目つきでジロジロと無遠慮に見つめている。


< 43 / 87 >

この作品をシェア

pagetop