封印せし記憶


「てめぇらには関係ねぇ。…おい、行くぞ」

静菜に視線をやり歩き出す和弥。
それに伴い静菜も歩き出そうとしたものの、鼻ピアスの少年が静菜の肘近くの腕を掴んだことでそれが遮られた。

「なぁ、あんたが朝日奈静菜っての?賢いんだってな。なんであんな落ち零れと付き合ってんの?」
「おいっ!」

和弥が牽制するように怒鳴るが、そ知らぬ顔で静菜を引き寄せる少年。

「こんな奴より、俺らと遊ばねぇ?楽しいこと教えてやるよ」

静菜の耳元で、少年はねっとりとした声でそう囁いた。

「おい。その手を離せ。おまえ、調子に乗ってっと、ぶっ飛ばすぞ」

地の底を這うような低い声が響き、その迫力に気圧された少年は反射的に静菜から腕を離した。

「…ちっ…なにマジになってんの?」

少年はほんの一瞬でも怯んでしまったことに苛立ちを覚え舌打ちをしたその直後、それを悟られまいとせせら笑いながら言ってのけた。
後の2人は、和弥の雰囲気に呑まれてしまっている。
出来れば関わりたくないというのが本音なのかもしれない。


「まぁ、いいや。今日は噂確かめに来ただけだから。また今度、ゆっくりお話してよ。静菜ちゃん」

静菜の顔を覗き込んで、なれなれしくそう告げると来た道を引き返していく少年達。

その後姿に向かって忌々しげに大きく舌打ちした和弥はすぐに俯き加減で突っ立っている静菜へと視線を移した。


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