ベイビーベイビーベイビー
焼香の列は、延々と続いていた。
喪主である祥吾の父親と、その横で祥吾の母親が、参列者の一人ひとりに頭を下げている。
綾乃たちもその長い列の最後尾に並び、皆がそうするのと同じように焼香を済ませ、祭壇に横たわる祥吾の棺に向かい、手を合わせた。
祥吾の母親が「ごめんなさいね」と小さく綾乃に呟いたのを、綾乃は聞こえないふりをして一礼をした。
焼香が終わると、いよいよ出棺である。
客人は式場の外でそれを待つこととなり、焼香が終わった者から係員に案内され式場の外へと出ていく。
綾乃らもお互いに顔を見合わせると、それに続くべく静かに歩を進めようとした。
―――と、
「綾乃さん」
綾乃は祥吾の両親に呼び止められた。
「綾乃さんも棺にお花を入れてあげて」
焼香が終わった後、祥吾の棺が再び開けられ、祥吾を包むように会場に飾られていた花々やら思い出の品やらを入れるのであろう。
短く切られた菊や百合は、これまで息を潜めるようにじっとしていた綾乃を襲うように強く香り、綾乃は吐き気すら覚えた。