ベイビーベイビーベイビー
 

 両親がマンションを訪ねると、綾乃は古澤の両親から渡された封筒の中身をテーブルに広げ、それらに触れる事もせず、無表情でその様子を見詰めていた。

 そこには離婚届の他に、古澤の両親が一切を任せたという弁護士の名刺と、その弁護士によるとみられる簡単な書面があった。

 遺産の手続きに関する事のようであった。


 祥吾を亡くした古澤の両親にも、綾乃に気遣い、これまで言葉の少ない両親であったが、

「何も今、こんな話を急いですることはないじゃないか!!」

と、それまで押さえ込んでいた強い怒りをとうとう露にした綾乃の父親は、大声でそう怒鳴ると、その書類を無造作に掴み上げ、床へと叩き付けた。


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