ベイビーベイビーベイビー
真理江が鈴木と言葉を交わすのは、これが初めてではなかった。
鈴木は常に革新的で、あらゆる固定観念を取り払い、取締役になってからも鈴木の下で仕事をする者一人一人の特性を驚くほど把握し、与えるべき者に与えるべき役割を与えた。
その鈴木が国外での人選において自分を薦めてくれているとなれば、それはこれまで華やかなだけだと見間違われてきた真理江の地道な仕事が「認められた」ようで、それは本当に有りがたいことであった。
「ありがとうございます。
とても光栄なお話で、本当に勿体無いくらいです。
ですが――…
少しだけ考える時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
今や「何も失うものはない」と開き直る事の出来る真理江である。
アメリカで心機一転を図るのも魅力的ではあった。
しかし、かといってやはり即答することはできなかった。