ベイビーベイビーベイビー
 

 綾乃が鍵を開けると、姉は

「あら!綾乃ちゃんだけ? 母さん いないの?」

と素っ頓狂な声を上げたが、だからといって さほど気にする風もなく、真っすぐ台所へ向かった。


 そして大変に慣れた様子で棚からポットとカップを取り出すと、家から持って来たらしいマリアージュの缶を開け、自分と綾乃に温かい紅茶を入れた。


 その様子を綾乃はじっと見ていたが、

「冷めるわよ?」

と姉に促され、姉と同じテーブルに着き、姉の入れた紅茶を口にした。

「あ、おいしい……」

 綾乃は静かに喜んだ。

 それを見た綾乃の姉の顔にも、笑みが浮かんだ。





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