調べの記憶〜春宮秘話〜

この宿は一階は食堂になっており、多くの人間で賑わっていた。


楽しげな笑い声を上げる若者の一団。


好奇心を隠し切れない若い娘たち。


静かに語り合う初老の夫婦。


視線を投げかける旅人。


 彼は入り口の帳場に座る男に、脇に抱えていた包みを示すと奥へと進んでいく。


店の中程の階段の入り口の側が、この店の主人の定位置であることを知っているからだ。




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