Drop Piece



「っごほ、ごほっ!!」

紅茶を飲んでる途中に言ったからか勢い良くむせる利央。


「利央?」

「たんとーちょくにゅーすぎ」


苦笑い気味の利央の横顔をじぃっと見つめる。

「なーに?誰から聞いたのー?」

にっこりと、紅茶を片手に微笑んでるけど目が切なそうに感じた。


あたしは思わず利央の顔を両手で包む。

ほっぺを挟むようにすると、さすがに利央もびっくりしたみたいだ。



「どうして…そんな目をするの」



あたしは恋とか、まだどんなものか全然わかんないけど。

好きな女の子って一人だけじゃないの?

…そんな単純なものじゃないのかな。



「みんなね、俺を好きになってるんじゃないんだ」

「……え?」

「アイドルとして、芸能人としての俺を好きなの」

「利央?」


利央の瞳の悲しみの色が増す。


「そんなのに本気でなんか応えれるわけないじゃん」


冷たい、言葉。

今、利央のことが好きな女の子が聞いたら絶対傷つく、言葉。


だけど、ねぇ利央。


利央が一番傷ついてる風に見えるのはあたしだけなのかな。


「利央…」

「そんなに俺のこと心配?」

いつものふわふわ笑顔は今は何だかぎこちない。



「当たり前だよ」

友達になったんだもん…。


そっと利央のおでこがあたしのおでこにこつん、と触れる。


「じゃぁさ、本物の恋教えてよ。……光」



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