青瓶奇譚




離れて座っていても



たとえ手で触れることができなくても



ぼくは図書室でかすみと過ごす時間が



とても幸せだった



そして



かすみも必ずそう思っているということは



分かっていた



言葉を交わすだけが



愛ではなくて



触れるだけが



確かめ合うことじゃない



はたから見れば



ぼくたちの心が通い合っていて



ほとんど同じ思いでそこにいることなど



分からないだろう



しかし



その図書室に抱かれた空間の中で



ぼくとかすみが共有していた時間








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