プリン
第1章 事件発生
1 消失

 土曜日の午後、
冷蔵庫を開けると
僕のプリンがなかった。

2日前に買っておいたのに。

どこに行っちゃったの~、
僕のプリン?

誰かが食べたのに決まっている。

冷蔵庫は家のキッチンにあり、
まさか泥棒が入って
プリンだけ持って逃げていく
ことは考えにくい。

だから、食べたのは、
家の中の誰かだ。

お父さんとお母さんは
旅行中で留守だから、
今日、家にいるのは、
妹と弟とおじいちゃんの
3人だけだ。
この3人のうちの誰かが
犯人ってことになる。


今は8月。

今年の夏はとっても暑い。

今日はやけにセミの鳴き声が
いつもより大きく聞こえる気がする。

隣の家の風鈴の音も
いつもより鮮明に聞こえる気がする。

風鈴の音で暑さを忘れようと思って、
隣の家の人は、
大きな風鈴に付け替えたのかな?

ジ~~というセミの声と
チリンチリンという風鈴の音が
一緒くたになって聞こえてくる。


妹は夏休みの宿題で忙しいらしい。

机に座って何やら一生懸命書いている。

その後ろ姿を見ると、
「冷蔵庫に残っていた最後のプリン、
食べちゃった?」
とは、なんとなく聞きにくい。

弟は昆虫採集に行っていて、
今は留守だ。

帰ってきたら、
プリンのことを聞いてみよう。


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