プリン
2 おとうと

 弟が帰ってきた。

「お前、
冷蔵庫のプリン、
食べなかった?」

「食べてないよ。
冷蔵庫にあるもので食べたのは、
スイカだけ。」

「本当だよな。」

「ウソついたって
しようがないじゃん。
なに、プリン、もうないの?」

「僕が買っておいたプリンが
 なくなってるんだよ。」

「そんなの、また買ってくればいいじゃん。
 なんなら、僕が買ってこようか?
 どうせコンビニで買ったプリンでしょ?」

「まあ、そうなんだけど。
 僕が気にしているのは、
 プリンがないってこと。
 プリンはまた買ってくるよ。
 だけど、今回、プリンを食べた犯人を
 突き止めておかないと、また近い将来、
 同じような(プリンが消える)ことが
 起きる可能性が高いだろ?
 だから、僕は今回の犯人をきっちりと
 突き止めておきたいんだよ。」

「じゃあ、犯人は妹かおじいちゃんでしょ。
 妹とおじいちゃんに聞いてみたの?」

「いや、まだだけど。」

「じゃあ、先にあの人たちに聞いてからにしてよ。
 ひどいなあ、一番最初に僕を疑うなんて。」

「ああ、そうするよ。ごめん、ごめん。」


無理矢理、笑顔を作って、
そうは言ったものの、
僕はしっくりとしない気分だった。

なんとなく、弟の態度は怪しい。

プリンがないなら、
自分が買ってくるさ、だって。

まるで、自分が食べたことの
罪ほろぼしのように。


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