あなたは講師
私は教師になった。
もうあの人は霧の中のようにボヤけてしか思い出せない。
9年なんてあっという間だった。
教師になったからって、あの人に会えるわけない。
あの人は福岡にいったから会うことなんてない。
だけど私は教師になった。
あの人に少しでも近付きたくて。
「今年から2年3組の担任と2学年の理科を教えます。
鈴木梨那です。
よろしくお願いします。」
私は運良く一発で教師になれた。
あの人はなれたのだろうか。いや、とっくになっているだろう。
なっちゃんは、私が中3の時の試験に合格した。
時々あの人の声が聞こえる。
「頑張れよ」
って…そんな気がする。
私の都合良いように聞こえるなんて……あの人はもう私の事覚えてないだろう。
私は単なる生徒の一人だから。