地球最後の24時間
「ただいま」

 家族に包まれて張り詰めていた心がほどけてゆく。今日一日がどれほど辛かったのか、その時わかった。

「とにかく上がりなさい、ね。美味しいご飯作ったんだから」

 母親が俺の背中を押した。その手を振り切るのは身を裂くほど辛い。断腸の思いで胸のうちを吐き出した。

「ごめん母さん。すぐに行かなきゃならないんだ」

 母親だけではない。そこにいた誰もがその言葉に息を飲んだ。沸き返った家の中は一瞬にして静まり返った。

「マキちゃん、行っちゃうの?」

 姪っ子の沙羅がぽつりとこぼした。続いて小学校に今年上がる佳絵が抱きついてきた。

「やだっ、マキちゃん行っちゃやだよ!」

 小さな顔をくしゃくしゃにして俺にすがりつく姿に胸が熱くなった。

「ランドセル……まだ見せてないのにぃ!」

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