地球最後の24時間
「すぅ……ふぅ……」

 深呼吸をしてタイミングを計る。今の痛みでさえ気が狂いそうだ。

(イチ……ニイ……)

「があああ!」

 痛みは予想を上回り、思わず生をつなぎ止めていた左手を離した。指がほどけ、手のひらから杭がすり抜ける。体は重力の法則に従い、なすすべもなく落ちていく。

「死ぬかああ!」

 間一髪、右手の薬指が杭を捉えた。

「おおおおおっ!」

 続いて中指が、人差し指が絡まり、そしてしっかりと生を掴み取る。渾身の力を込めるとそのまま一気に体を引き揚げた。

 背後から迫り来る炎が休ませてはくれない。全身に痛みを抱えながら遮二無二斜面を駆け上がった。

 切れ切れな息のなかで、取りとめたこの命のことを思った。
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