空の少女と海の少年


「ーーうお!?」

「どうしましたか?」

「いや…なんか寒気が…」


肩をビクリと震わせる石川だが
寒気は一瞬で気のせいだったのだろうと
特に気にする事なく視線を前に戻した

とても広いこの部屋の壁は全て
膨大な書物で埋め尽くされている
それらは殆どが能力者に関するもの

それもその筈だろう
この部屋は世界中の能力者を
一人前に成長させる為の施設

学園の校長室なのだから


大きな窓を背に石川を見るのは
茶色の巻き髪に黒いスーツ姿の若い女性

この女性こそが広い学園の頂点に立つ
学園の最高権力者、学園長


「ーーそれじゃあ俺はここで。間違えて連れてきちゃった1人は連れて帰りますので、後はお任せしましたよ」

「ええ、ご苦労様」


石川は学園長に一礼すると
部屋を後にしようと背を向ける


「ちょっと待ちなさい」

「……はい?」


学園長は窓の外を見つめたまま
楽しそうに笑みを浮かべた


「連れてかなくていいわよ」

「え?いや、しかし彼女は一般人ですよ?」


他の3人とは明らかに違う
小柄な少女を思い出しながら
石川は学園長に告げるが


「いいじゃない。たまには普通の女の子とも話してみたいのよ。大丈夫、話し終わったら私が責任持って送り届けるわ」

「まああなたがそう言うなら俺は何も言えませんが…ではお願いしていいんですね?」

「ええ。勿論」


学園長の笑みに笑みで返すと
石川は扉の向こうへと消えていった

石川がいなくなったのを確認すると
学園長はまた窓へと振り返り
汚れひとつないそれに手を添えた


「これからは賑やかになるわね」


学園長はとても楽しそう微笑んだ


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