空の少女と海の少年


「──玲、準備できたー?」

「できたよ。蘭はー?」

「できたよー。」


黒い制服に袖を通して
指定の赤いネクタイを結びながら
玲と蘭は話していた

その時急に
部屋の電話が鳴った


こんな時に誰だろう


そう思いながら
玲は受話器を取った


「もしもしー?」

「どっちかしら、玲?蘭?どちらでもいいですが、そのだらしない返事は何かしら。」


威厳のある高い女の声

玲と蘭は顔を見合わせて
唇を噛み締めた

電話の向こうにいる人物が
玲と蘭は大嫌いだ


自分たちを道具としか
見ていないあの女は大嫌いだ


玲は冷静になる為に
深呼吸をして
いつもとは違う
冷たい声で答えた


「玲です。申し訳ありませんでした……お母様。」

「学園から連絡が入りました。今回の事で勝手に死ぬことは許しません。」

「分かっています。」

「あなた達は西園寺財閥の跡取りであり、それ以外の何者でもありません。その事を忘れないよえに。」


その言葉を最後に電話は切れた

玲は無言で受話器を戻して
近くにあった椅子に座った

その瞬間、部屋の中に
草花が咲き始めて
どんどん成長していく

蘭は顔色を変えて駆け寄り
ぐったりする玲を揺すった


「玲!落ち着いてよ!」

「ごめん……。制御…できない。」

「あの女の事は忘れて!今から仕事なんだよ!」


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