空の少女と海の少年


「──そして蘭は病院で緊急手術を受け、なんとか一命を取り留めました。」

「だけど二人共意識が戻らなくて……いつ戻るのか分からないんだって…。」


優と奈央の説明を聞いて
春の頬を涙が伝った

ポタポタと
春の大きな瞳から
次々に涙が溢れて床を濡らす


意識不明の重体


その言葉が頭の中を
ぐるぐると駆け回る


もしも、もしも、
すでにリールを倒してたら
こんなことにはならなかった
春のせいだ……
春のせいで二人は……

春は二人を守れなかった


春が自分を責めて
うずくまっていると
由紀はしゃがみ込んだ
そして


パンッ


乾いた音が病室に響いた

春は叩かれた頬を押さえて
涙に濡れた瞳で由紀を見て固まった


ポタリ、ポタリ


由紀の瞳から溢れる涙が
春の頬に落ちた


「自分を責めても意味がない。みんな同じ気持ちなの。¨なんで守れなかった¨みんな思ってるの。春だけが……春だけが辛いんじゃない。私も奈央も優も……玲と蘭も、みんな辛いの。」

「由紀……。」

「一人で抱え込まないで。みんな、同じ気持ちだから。」


春は静かに泣く
由紀を抱き締めて
しばらく一緒に泣いた

奈央と優は顔を見合わせて
思わず微笑んだ

お互いの頬には
涙の後が残っていたから


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