空の少女と海の少年


……誰だろ?


春がジッと見ていると
女性が春達の方に向き直った

どこか気品が漂う女性は
誰かに似ている気がしたが
春は思い出せなかった

女性は春を素通りして
奈央達の前に立った


「うちの大切な商品によくも傷を付けてくれたわね。」

「すいませんでした。」

「その言葉は聞き飽きたわ。」


吐き捨てるように言って
女性はそのまま行ってしまった

唇を噛み締める奈央の肩に
そっと手を置いて由紀は頷いた


「あんな女の言うことは気にしない。それよりも玲と蘭だよ。」

「……そうだよねっ。」


無理やり作った奈央の笑顔

2人が扉を開けて
中に入っていったので
春と優も続けて中に入った

そして、絶句した


「………嘘…。」


ピッピッと
無機質な電子音が
やけに頭に響いた

透明なカーテンの向こう側の
ベッドで静かに眠る
玲と蘭の体には幾つもの
コードが取り付けられていた

医師と看護士が常に動いて
この緊迫した状況が伝わってくる


「蘭は魔神に胸を貫かれました。」


優がゆっくりと
説明してくれるが
春は玲と蘭から
目が離せなかった


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