空の少女と海の少年


──魔界にある魔王城

魔界全体を見渡す事のできる屋上で
リールは塀に座りながら
小さな声で歌を歌っていた


その歌はまだ天界で暮らしていた頃
たったひとりの友達が
いつも歌っていた歌

目を瞑ればすぐに浮かぶ
屈託のない純粋な笑顔


¨天使¨の資格を失った
堕天使である私に対して
笑顔を向けたのは彼女だけだった


リールは歌を止めて空を見た

魔界では珍しく、今日の空は
星の光で埋め尽くされていた


友の事を思い出していたからか

大嫌いだった星空から
目を背けることはなかった


瞬く星の光があの笑顔と重なり
リールは悲しそうに目を細めた


『アキはもういない。』


自分に言い聞かせるように声に出す

もやもやした気持ちを
体の中から吐き出すように
深く溜め息をつくと
大きな漆黒の羽根をバサリと広げた

それが合図だったのか
リールの後ろに三人の魔神が現れた


『姫、よろしいのですね。』

『当たり前でしょう。この為に私は監獄から抜け出してきたの。』


右手を横に突き出し
闇の中から現れた大きな鎌を握る

魔神達は顔を見合わせると手を上に掲げた

すると、澄み渡っていた空に黒雲が立ち込め
大きな雷鳴と共に一筋の雷が落ちた


それは出陣の合図

城の下には魔物達が集まってきた


『さあ、行こうか。』


リールの瞳には
強い決意の闇があった


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