空の少女と海の少年


お姫様が産まれる少し前

私は色々あって魔界に落ちたの


「……ちょっ!色々って?」

『色々は色々。その話は長くなっちゃうし、お姫様には関係のない事だからね……。』

「でもっ……!」

『ごめんね、時間がないの。』


多分、話してくれないのは
時間がないだけじゃない……。

心を開いてくれてない。

こんなに近くにいるのに
何だか……遠いな。


春は少し悲しくなったが
時間がないのは事実で
話を再開したリールの声に耳を傾けた


『私は運悪く、魔界の中で最も暗い、深い森の中に落ちてしまったの。』


真っ暗で、寒い森の中を
私はひたすら歩いてた

色々あって天界には
帰りたくなかったから


しばらくしたら森が開けて
小さな湖のある場合に出たの

本当にここが魔界なのか疑うくらい
その湖の水は綺麗で澄んでて
私は座って湖を眺めてた


綺麗な湖を眺めてたら
辛かった事とか悲しかった事が
涙になって溢れてきて

周りに誰もいなかったから
私は思い切り声を出して泣いてた


少ししたら落ち着いて、泣き止んだ

私の顔が水面に映ってて
目が腫れて酷い顔だったから
パシャパシャと顔を洗ったんだ


『その時、あの子に会ったの──』


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