空の少女と海の少年


『ねえ、お姫様は堕天使と天使の違いを知ってる?』

「えっ……と、羽根と瞳の色?」

『そう思うよね。でも違うの。』


春が首を傾げていると
リールは漆黒の羽根を優しく撫でた


『違うのは瞳の色だけ。堕天使になってもね、羽根はそのままなの。羽根が黒い天使が堕天使って訳じゃないの。』

「じゃあその翼は……?」

『私の羽根は生まれつきこの色なんだ。気持ち悪いでしょ?漆黒の羽根の天使なんて。』


そう言って悲しげに笑うリールは
やっぱり春の知ってるリールじゃなくて


「あなたは本当にリールなの?」


思わずそう聞いてしまった

リールは驚いたように
目を見開くと苦笑いをした


『あなたが会った私は私だけど私じゃないの。』

「え?」

『私は大樹に体を取られてここに閉じ込められちゃって。だからあなたが会ったリールは私じゃなくて、この大樹。』


え……と。

春が今までリールだと思ってたのは
リールの体を乗っ取った大樹で

本当のリールはこの人で……?

……えっと…?


『……初めから話した方がいいみたいだね。』


頭からプシューと煙を出す春を見て
リールは困ったように笑った


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