空の少女と海の少年


──和やかな会場とは打って変わって
城の中では使用人達が走り回っていた


「こっちにはいません!!」

「お部屋にもいません!!」

「庭にもいませんでした!!」


玉座が4つ並ぶ大きな部屋で
次々と使用人達から報告を受けるが
どれもこれも同じ内容¨いません¨

苛立ちながら眼鏡を上げるのは大臣
大臣と言うには若すぎる男だが
実際、生きている時間は
この城の誰よりも長かったりする


「全く……何故見つからないのですか!!あなた達の背中の羽根は飾りですか?飾りなら切りますよ!!嫌なら走り回ってないで空から探しなさい!!!」


大臣の叫びに使用人達は真っ青になって
バタバタと王の間から出て行った


「ったく……神様達も帰ってきませんし……何をやっているのでしょうか……。」


ブツブツと愚痴を言っていると
後ろからクスクスと笑う声がして
大臣は深い溜め息をつきながら振り返る


「……ミキ様、笑い事ではありません。もうすぐ式典が始まるというのに春様と海斗様といったらどこにもいらっしゃらない!これがどれだけ重大な事か分かりますよね!!」

「ふふふ、楽しいからいいじゃない。」

「そうよ。式典なんて面倒くさい事、海斗が逃げるの当たり前でしょ。」

「アヤ様まで……はぁ……。」


大臣はまた深い溜め息をついた

腰まである栗色の髪に金色の瞳の女性は
口元に手を当ててクスクスと笑い
肩につく位の長さの黒髪に黒い瞳の女性は
面倒くさそうに爪をいじっている


この2人こそ、春と海斗の母親
元天使である空の王女ミキと
元人間である海の王女アヤだ


_
< 643 / 652 >

この作品をシェア

pagetop