空の少女と海の少年


「春、顔上げろ。」


海斗の声に春は顔を上げると
大きな目を見開いて海斗を見る

微笑んでくれた海斗の顔が
溢れる涙のせいで歪む


「っう……海斗っ…大好き〜……。」


恋の神様にもしも会ったら
絶対にありがとう言おう


心の中で誓いながら
海斗に手を引かれてゆっくりと足を運ぶ


海を見晴らせる高台には
色とりどりの花が咲き乱れ
その向こうに白い小さなチャペル

金色のベルの前で止まって
海斗は春の左手を取ると
手を合わせるように左手を重ねた


「……春、俺の目ちゃんと見て。」


春は右手で涙を拭うと
海のように深い蒼色の瞳を見つめた

海斗は深く息を吐いた後
自分を見つめる空色の瞳を見た



「結婚しよう。」



待ち望んでいた言葉と共に
溢れる涙はもう止まらない

何度も何度も頷いて
ポタポタと涙が落ちる

ヒヤリとした感覚を薬指に感じて
ジッと見つめてまた涙が溢れる


涙が止まらないよ

こんなに嬉しいことなんて
こんなに幸せなことなんてない


「愛してる。もう一生離さないから。」

「はっ…春も……春も愛してるもんっ…!」


2人は視線を交えると
そのまま静かに唇を重ねた


薬指にキラリと光る婚約指輪


空と海に架かった祝福の虹と

木の陰からこっそり覗く仲間達の存在に

2人が気付くのはずっと後の事



* To be continued... *


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