空の少女と海の少年


ああ……やべえ緊張してきた


坂道を登るにつれて
さっき違う意味で心臓が煩い


今日、
俺は春にプロポーズする


絶対に今日言うって決めてた

王位継承式典なんかやってられっか
俺の方がずっと前から決めてたんだ

春は忘れるんだろうけど
今日は春の誕生日だから



坂道が緩やかになって
海を見渡せる海岸に出た

楽園から持ってきた花畑
その中心に真っ白なチャペル

チャペルは前からここにあった
廃れてたのを綺麗に磨いて
奈央に作らせたベルを付けた


「春、顔上げろ。」


にやけてた春は顔を上げると
大きな目を見開いて
涙が浮かぶ瞳で俺を見上げた

俺が微笑むとぼろぼろと涙が溢れる


「っう……海斗っ…大好き〜……。」


泣きながら言う春が
愛おしくて堪らない

手を取ってベルの前までいくと
春の左手と俺の左手を重ねた


泣く春もいいけど
やっぱり顔を見たい


「……春、俺の目ちゃんと見て。」


優しく言うと涙を右手で拭って
澄んだ空色の瞳で真っ直ぐに俺を見つめる


すっげえ迷った
何て言おうか、どう伝えようか

簡潔な言葉で言うよ

すぐに君に伝えたいから
すぐに君を抱き締めたいから

俺の気持ちは後で
嫌ってくらい伝えてやるよ



「結婚しよう。」



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