スタッカート
黄金色の空。
溶け始めた夕陽が、薄くなった雲から顔を覗かせている。
トキと二人で、暗い廊下を肩を並べて歩く。
お互い無言のままで、でもそれはやはり、少しも居心地が悪いことではなかった。
ちらり、と真っ直ぐな瞳で前を見ているその横顔を盗み見る。
……練習中のトキは
まるで、別人のようだった。
それは勇太さんも、恵さんも、ではあるけれど―彼は特別、違って見えた。
鋭い目に光が宿って、弦を押さえて弾く指先に、魔法がかかって。
私なんかでは踏み込めない、音楽の世界が、一瞬でそこに生まれて。
私はそこでもまた、トキとの間に、見えない厚い壁と、果てしない距離を感じた。