スタッカート
トキは、隠すように顔を背けて、ずんずんと歩いていく。
その後ろ姿に、胸の奥がくすぐったくなった。
どうしよう。
どうしよう、だってすごく―
「かわいい…」
「ああ!?」
勢い良く振り向いたトキに、思わず笑みが零れる。
開いた距離を埋めるために、小走りで駆け寄る。
星が見えない空、点滅する信号、鈍く光るアスファルト。
まぶしい夜の光が、きらきらといつもの景色を照らす。
いま、目の前に居てくれる人が、世界を色づかせる。
「ねえ、トキ。…大好きだよ」
笑顔と一緒に零れ落ちた言葉は、トキの目を見開かせた。
彼は何故か悔しそうに眉間に皺を寄せて、また少し顔を赤らめて――
きゅっと私の手を掴んで、引き寄せる。
耳元で囁かれた言葉に、思わず顔を赤らめたとき
柔らかな笑顔が、優しく私を包んだ。