スタッカート
懐かしい景色が、そこにはあった。
窓から差し込む光を受けて輝くドラムセット、
壁に掛けられた、滑らかな曲線を描くベース。
どっしりとした大きなアンプ。
古びたグランドピアノ。
―ただ、あの日は見なかった「軽音部員」がそこには大勢居て、その目が「いきなり部室に入ってきた他高の女」に集中していた。
その視線に怖気づいた私は、一瞬、頭の中が真っ白になってしまった。
冷たい汗が、額に浮かぶ。
―たくさんの、目。
目を向けていた大勢の中の一人の、少年のような幼い顔の男の子が、少し首を傾げて、エレキギターを担いだまま私のほうに歩いてきた。
耳に光る銀のピアス。
片耳だけで何個開いているのだろう。
視線から目を逸らしたくてその耳を凝視していると、男の子が口を開いた。
「―あんた、誰?」