スタッカート
「馬鹿か、お前は!!」

じんじんと、焼けるように痛い額を押さえ呻いている私を、トキが怒鳴りつける。
暴力だ…と蚊の鳴くような声で訴えると、馬鹿が、という言葉と盛大なため息を吐かれた。

「ここは勇太みたいなヤツばかりがいる場所じゃねえし、むしろタチの悪い奴のほうが多い。

…だから、ここには来るなっつったんだろうが!」


その言葉に、目を見開いた。


今、なんて…?

勇太さんみたいなヤツばかりじゃない…?
タチの悪いヤツ…?

私の事が、嫌いで、関わりたくないからなんじゃないの?

きょとんとしたまま、首を傾げる。


…そこで、私は思い出してしまった。

―「ここには来るな」というトキの言葉を、「そうじゃないんだ」と言ったヒナ。

…その言葉の、意味。



…いや、きっとこれは私の勘違いなのだろうけど、99パーセントの確率でそうなのだろうけど……


そんな、まさか。




戸惑いながらも顔を上げて、目の前に立つトキを見た。トキは一瞬目が合うと、すぐに気まずそうに目を逸らし、俯いて続ける。


「お前みたいな馬鹿は、どんなことに巻き込まれるかわかんねえ」


その、言葉に。


頭の中が、真っ白になった。

タイミングの悪いことに、顔を上げたトキと目が合う。


トキは、きっと相当な阿呆面になっている私の顔を見ると一瞬驚いたように目を見開いた。そして、徐々に赤らむ顔を隠すように、私から視線を逸らして言った。




「………この前の…“出てけ”って、何だよ」


…それは、かなり無理矢理な話題転換だったけれど。
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