スタッカート

きょとん、と首をかしげる私に、トキは無表情のまま続けた。


「……はじめてお前のピアノを聴いたとき、あまりにも音が空っぽだったから、…ああ、こいつも「独り」なんじゃねえかって思ったんだ」


―…こいつ「も」?


首を傾げる私に、どこか寂しげな笑みを向ける。

「でも結局、今のピアノ教室でもトラウマの原因になったピアノ教室でも、お前は独りじゃなかった。


金沢みたいなヤツだって、母親だって、お前の為に悩んで、苦しんできたんじゃないか」


そう言って、トキは私の眼を真っ直ぐに見てきて。


「それが分かったなら……お前はきっと変われる」




―…それは、今まできいた中で一番、穏やかで、優しい声だった。
< 97 / 404 >

この作品をシェア

pagetop