スタッカート
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トキに会った日から一週間が経ち、発表会までは残すところあと三日となった。
私は、ピアノの無い日はヒナのお見舞いに通い、朝も昼も夜も、ただ黙々とピアノを弾き続けていた。
何回も、折りたたんでは広げてを繰り返し、しわくちゃになった楽譜の上、踊っているたくさんの記号。
ひとつひとつを、指でなぞっていく。
フェルマータ、タイ、クレッシェンド、スタッカート。
「ここのスタッカートは、スキップするイメージ。自由に楽しんで弾くの」
ピアノの先生―藤森先生の言っていた言葉が蘇る。
私は、ゆっくりと目を閉じ、白と黒の鍵盤に指を乗せ、意識を集中させた。