心に潜んだ七色の鬼―刀を持った青い鬼―
号令の後、鬼寺さんの周りには一気にクラスの奴や他の学年の生徒達が来て鬼寺さんを囲んだ。
俺ももっと彼女に話し掛けたかったけど、俺は波のように押し寄せてくる生徒に押されて流されてを繰り返すうちに廊下に流されていた。
仕方がないから俺は一人で窓の外を眺めていることにした。
しばらく窓の外から見える学校の周りに咲いている緑の葉っぱがしげった木が風に揺れて動く様子をぼんやり見ていたら、後ろからユイカが声をかけてきた。
「なーにやってんの? テルっ。」
ユイカは自分の腰に両手を添えて俺のことを見ていた。夏になって半そでになった制服のブラウスの袖からは曲がった肘が良く見える。
「いや、なんか気がついたらここにいたっていうか……。」
「鬼寺さんに近づこうとしたら、ここまで人に流されてきたんでしょ?」
「まあ、そういうことだけど……。」
ユイカはそう言って俺の隣に来て締まった窓によりかかった。そして、その腰に添えていた手を自分の頭に添える形にして俺のいるほうに顔を向けて話し掛けた。
「それにしてもテル、今日すごいことしちゃったね~。あんなお嬢様を案内していくなんて。」
「え? あの子お嬢様なの?」
「アンタ…。まずこの島で車に乗ってたっていうことから気がつきなさいよ。ただでさえこの島に車が走ってることでさえ天然記念物モノなんだからさ~。」
「あ…そっか。」
「それにっ! 鬼寺って言う苗字といえば、あの有名な鬼寺財閥の一人ってことよっ! アンタだって持ってるでしょ? 鬼寺グループの製品のもの!」
ユイカは俺と二人になるとたびたび性格がキツくなる。なんか…ツンツンしてるって言うか…。他の皆と一緒にいる時はそんなことないのに。たまに俺のこと嫌いなんじゃないかって思ったりする。
それにしてもあの子、あの鬼寺財閥の人なんだ……。知らなかった。
鬼寺財閥って言うと、今じゃいろんなジャンルで高い地位を築いてるすごい有名な財閥だ。こんな外れにある所にもその名前が知らされてるってことは、よっぽど有名なんだろう。
俺も家具とかそういうのはないけど、薬とかそういうのなら鬼寺医薬品の物があった気がする。伴奏工とか!
あの子はすごい子なんだな…・・・。