逢えたから

「ようかい……」


やっとのこと出した僕の声は酷く掠れていて、羞恥で顔が赤らむのを感じた。

少女は楽しそうにただクスクスと笑う。


「そう妖怪。名前はそうね…


   ハナ


……とかどうかしら」


くすくす

くすくす


彼女は笑う。

確かに花のような、少女だと思った。

「ハナ…」


「そう、ハナ。じゃあね。人間さん、さようなら」

くすくす

くすくす


僕が何か言おうとするまえにハナは桜に溶けるように消えた。

後に残ったのは、くすくすと笑うハナの声と、ハナの残像を残して咲く桜。

夢を見ていたかのようだった…
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