逢えたから
この人はいつも言うことが遅い。
だから何事もきちきちとする父さんとは、反りが合わないのだ。
不平を言おうと口を空けた途端、車体が大きく跳ねた。
…舌かんだ……
「懐かしいわー。自然がたっぷりで心が落ち着くわね。あんな要塞みたいなところ、やっぱり私には合わないのねー。」
要塞とは恐らく父さんと暮らしてた、都心のマンションのことで母さんはそこを結構気に入っていたはずだった。
自分に言い聞かせるのか、僕に同意を求めているのかわからないが、あまりの幼稚な考え方に軽蔑をこめて黙り込んだ。
あまりこの人と二人でいたくないなあ…めんどくさい
父さんと喧嘩していたときも、僕に愚痴をもらしてきてたまったもんじゃなかった。たかが中学生に大人の愚痴を背負うなんて無茶なことだった。
父さんも父さんで僕に厭味をいうし、板挟みの僕はその解放のときを心待ちにしていたのも事実だ。
こんな田舎に来るなんて思いもしなかったけれど。