つま先立ちの恋
不思議だった。どこでどう変わったのかもわからないくらい。

シロ先生の目はいつの間にか、少年の色ではなかった。

もしかしたらこの目は ………――


「走れ、孫。走って走って、頭も体も空っぽにしてしまえ。で、最後の最後に残った気持ちがほんまもんや。それがどうしても譲れんモンやで」

そう言いきってしまうとシロ先生はにっこり笑って立ち上がった。

「さ、そろそろ行かな。まだ挨拶せんとあかん人もおるしな」

私はそんなすらりとしたシロ先生を座ったまま見上げる。

「ま、たくさん悩んどき。生きとる人間の特権やからな」

「………先生」

「ごちそうさんでした。」

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