つま先立ちの恋
バレンタインを2日後に控えたその日。ここ、クラブハウスの片隅にひっそりと集まったのは…

「灯歌ちゃん、今年は手作りやめたの?」

葵ちゃんは円らな瞳と七色の声を持つ、放送部のアイドル。

「葵ちゃん、去年はマカロンを作ろうとして失敗したんだよ」

思い出したくもない、一年前のあの悪夢。

『マカロンなのに奥歯で噛み砕かなきゃいけないほど硬かったよね』

その悪夢をあっさりと簡潔に説明してくれたのは、絶滅黒髪おかっぱ頭のよく似合う女の子…の右手のカエルのパペット人形。ま、何故にカエルのパペット人形が、ていうのは聞かないお約束で。

私たちは彼女のことをパペちゃんと呼んでいる。

ちなみに私とパペちゃんは生まれた日が一緒とゆーミラクルな関係でもあった。

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