つま先立ちの恋
だけど和泉は何も言わず、私から目を逸らすだけ。そして歩き出す。


・・・・・何だ?


今度は逆方向に首を傾けながら、そんな和泉を追いかけた。

私が和泉に追いつくと、和泉はもういつもの顔をしていて、

「今はバスケがおもしれぇからな」

まるで、独り言みたいに呟くから、

「和泉、うちの高等部行くって本当?」

「何だよ、急に」

「だって、推薦の話たくさんきてたじゃん。その気になればもっといい高校…」

「いいんだよ。うちの高等部だってそこそこ実力あんだし」

「もったいない」

「もう決めた」

それでもまだ私は言い足りなくて何か言おうとしていたら、それを遮るように頭をクシャッ、てやられた。
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