姉弟道
11.全部君だった
翌日の学校の帰り道、俺は石楠花先生を見かけた。

「先生!」

声をかけると、石楠花先生は振り返って俺に笑顔を見せた。

「途中まで帰りませんか?」

自分から言うなんて正直恥ずかしかったけど、彼女は首を縦に振ってうなずいてくれた。

一緒に並んで歩いたけど、何故だか俺たちの間に流れたのは沈黙だった。

何か言わなきゃマズいよな…。

そう思った時、
「――あの…」

俺と石楠花先生の声は同時だった。

えっ?

俺も驚いたけれど、石楠花先生もビックリしたように目を見開いていた。

「その…お先に、どうぞ」

そう言った石楠花先生に、
「いや、いいっすよ。

そんなにたいしたことはないので…」

俺は顔の前で手を横に振った。

「そう、じゃあ…」

やや遠慮がちに、石楠花先生の唇が動いた。
< 211 / 221 >

この作品をシェア

pagetop