姉弟道
「まだ、いるのかなって?」

そう言って樫野はちょっと恥ずかしそうに目を伏せた。

「いる、って言ったら?」

聞き返した俺に、樫野は恥ずかしそうに自分の指先を見つめた。

そんな彼女を見た後で、俺はまた入り口の方に視線を向けた。

俺と目があったのと同時に、あいつはすぐに目をそらした。

――バカか。

心の中で毒づくように呟いた後、俺は息を吐いた。

最初からバレバレなんだよ、ヘタクソが。

と言うか、どれだけ俺に世話を焼かせるの?

見合いに集中したくても、お前のせいで全くできないんですけど。

「樫野、ちょっと行くわ」

俺はそう言うと、席を立った。

俺が席を立ったと言うのに、樫野はまだ自分の指先を見つめていた。

*゚。梓Side。゚*END
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