姉弟道
樫野は恥ずかしそうに唇を開いて、
「一緒に、映画行きたいの…」
と、呟くように言った。

その瞬間、俺の手から丼が離れた。

「あぢー!」

この場に俺の悲鳴が響き渡った。

まだ中身が残っていた親子丼をジーンズのうえにぶちまけてしまったのだ。

しかも中身はまだ熱々だ。

冷めてたんじゃねーのかよ!?

「だ、大丈夫!?」

樫野は驚いてパニックになっている。

何か最近はこんなのばっかだな。

と言うか、デートに誘われた!?

そう思いながら俺は樫野が渡してくれたふきんで汚れたジーンズを拭いた。
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