東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~


死にたい…。

もう生きてなんかいたくないよ……。

死のう…。

今夜0時になったら、どっかのビルから飛び降り自殺してやろう……。

たぶんアッという間だと思う…。

死の恐怖なんて感じないうちに一瞬でparadise(パラダイス=天国)に行けると思うし……。

これから、このまま何年間もこの世のinferno(インフェルノ=地獄)で生き続けていくよりかはずっとマシだと思うよ、ゼッタイにね――


そのとき、あたしの脳裏に、熟れ過ぎたリンゴが落ちたみたいに、路上で砕け散ったあたし自身のビジュアルが浮かんだ。


次の瞬間、あたしは髪の毛をどうにかしなくちゃいけないと思った。

もし、自殺したあたしのカラダが警察で司法解剖でもされることになったら、後ろ髪にガムが付いてるのを見て、みんなに汚いと思われるんじゃないかと思ったからだ。

たとえ死んだあとでも、綺麗なカラダでいたいと思うのが女心というものかもしれない。



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