東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~


…ってゆーか、そもそも、あたし、もうすぐ死んじゃう人間なんだし、もう二度とこの美容院には来られるはずないんだよね。

あ~ァ、死ぬ前に、もっとこのヒトとおハナシしてみたかったな……。


「そーだ!!!!」


「え!?」

あたしが突然大声を出したもんだから、彼はビックリしちゃったみたい。

「今日、仕事、何時まで?」

「さぁ…」

「“さぁ”って? 8時くらいでお店、閉まるんじゃないの?」

「基本的にはそーだけど、お客さんがいれば閉められないし、業務が終わった後も、俺は後片付けとかいろいろやんないといけないから…」

「そんなに待ってらんないよ」

ここまで言うと、あたしはその後、小声で続けて言った。

「…ここだけのハナシ、あたし、もうすぐ死んじゃうんだ…」

「だから、そーいう冗談はやめろって」

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