【短編集】僕達の夏
『イレギュラー』でも、
『招かれざる子』でも、



「周りがどう見てても、あいつは、」

晃矢は、

「ちゃんと僕を見てくれてるから。」




こういう時、話を聞くだけだった風理が、始めて口を開いた。

「双子が細胞の突然変異で生まれるなら。異常なのは二人とも、だよ。」

「…え?」


「どちらか片方だけが異常なはずがないよ。同じように割れるんだからっ。それに、」



…嗚呼、



「根は同じでも、同じ所に枝は生えない。元は同じでも、晃矢と泰斗は別人なの。晃矢の真似をしても、泰斗にはなれないんだよ。」

どうしていつもわかるんだろう。
多分ずっと誰かに言って欲しかった。




僕が『生まれた』事が『間違い』じゃなかったんだって。



涙が滲んだけど、それでも笑った僕を見て、風理は涼やかに、優しげに微笑んでくれた。



雨の声と、風鈴の唄が心地良い。
< 27 / 95 >

この作品をシェア

pagetop