【短編集】僕達の夏
結局、妙な遭遇者のおかげで、帰るのがいつもより遅くなってしまった。
僕はいつもより1時間と15分遅れて家に着いた。
「ただいま」
「おかえり孝司くん」
台所から叔母が柔和な笑みを覗かせた。
いつものように笑みを返してそのまま食卓についた。
叔母夫婦はいつも「本当の親だと思ってくれて良い」と言ってくれるが、なかなか僕はそれが出来ないでいた。
僕がそう思う事で死んだ両親の存在が曖昧に、なかったかのようになってしまう気がして、後ろめたかった。
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