【短編集】僕達の夏
わけがわからない。





「…へ?」 



しかし彼は苛々と詰め寄ってきた。 



「早く答えろよ」

「えぇっ!?じ、じゃあ『在る』んじゃないですか…?」





全く意味のわからない質問にうろたえながら適当に答えると彼は次の質問を投げかけてきた。



「おまえは『踏み込む』か?
『逃げる』か?」 





ますます訳がわからない。



「早く」






そんなこと言われても何故今自分がこんな目にあっているのか皆目見当もつかない。


しかし答えないと帰してくれなそうな雰囲気だったので諦めて最後まで付き合う事にした。





「…じゃあ『逃げ』ます。」


















それから、

彼はいくつか意味不明な質問を投げかけ、適当だが僕が全て答えると満足したようで、ニヤリと笑うと去って行った。








「……なんだったんだ?」




答えてくれる人はいない。
ただ蜩が鳴くだけだった。
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