鎖を解き放し者

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 ガタゴトガタと、獣道同然の山道を一台の馬車が走っていた。
 
 その馬車は、とある屋敷に到着する。
 
 草木に隠れるよう偽装した厳重な門を通り、そこからきちんと舗装された道を走り始める。
 
 が、その平らな道を走るのもすぐに終わった。
 
 裏口だとは思えないほど、大きい扉の前に止まったのだ。
 
 その扉はただ大きいだけで、壁と同色だからあまり目立たない作りである。
 
 
 馬車が完全に止まるよりも先に扉が開き、中から身なりのいい服を来た老人と、薄汚れた青年が出てきた。
 
 赤い髪と目を持つ、先程少女に呼ばれた青年だ。

 
 彼とともに現れた老人は、落ち着いた物腰で馬車に歩み寄り、扉を開ける。
 
 うやうやしく頭を下げ、降りてきた中年男性を迎えた。
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