蝶々∞まりえ
公園
くらい空にグレーの雲がうすくたなびく。

高台に向かって走るほどに空気が澄んでいき、白っぽかった月明かりもだんだん黄色みをおびて鮮明になっていく。

高台に上るのはそう久しぶりではない。
晴れた日の昼間にも景色を見にきたし、つい最近もテレビで流星群のニュースをたまたま見て、流れ星をどちらが多く見るか勝負するために来ている。

『寒くないか?』
『うん。』

家の明かりもだいぶ消え、ところどころに赤や青のライトがポイントのように暗闇に浮かぶ。

『気づいてるよね?』
まりえはこちらを振り向きもせずそういった。

『友達は誰一人気づいていない、でも、あなたは気づいている。』

一瞬気づいていない振りをしようかと思った。
けれど、分かり合っていなければこの関係はどちらにせよ消えていくのだ、と思ってやめた。

『うまくいえない。友達にもそれとなく相談したんだ。でも、気のせいだといわれた。』

『好きな人ができたとか、一時の気の迷いとか、そういうのじゃないの。あたし自身、うまくいえないの。自分が怖い。』
さなぎの状態ってこんな気分かも知れない、とまりえはいった。

まりえは頭の中が変わってきたというのだ。

見える風景も、俺への愛情の持ち方も、今までの自分じゃないと。
いったい何が言いたいのかよくわからなかった。
彼女の中で起こる意識の変化まで分かり合えるはずはないのだ。

でも、俺が感じていたことは正しかった。


さなぎから蝶に変わる間、中の幼虫は、幼虫として動き回っていた時期とさなぎに変わった変化に戸惑うことはあるのだろうか?
それとも、いずれ蝶として飛び立つ自分を知っているのだろうか?
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