Butterfly's dream ―自我の境界線―
 ディスプレイに繋がった機械から伸びるコードはベッドの上まで続いており、その上に横たわる―――加藤瑞樹にまで伸びていた。


 3年に及ぶ植物状態での延命処置のせいで痩せこけその姿から生気は感じられない。

 きっと3年前ならその名の通り瑞々しい樹のように溌剌とした青年だったのだろうが。


 ディスプレイに映る少女と生の息吹きを感じる『瑞樹』という名前が目の前にいる青年を揶揄しているようでならない。

 橘は両親の手前、皮肉なものだと思う気持ちを表情を出さぬよう努め、ディスプレイを凝視した。


 瑞樹という青年を媒体として出力された映像は技術の進化によって生み出された物だった。

 どういう経緯で生み出されたものか知らないが『人の夢を出力する技術』である。

 子供染みた、夢のような希望を叶える装置だが技術の進化によってそれも可能になり、10年ほど前から一般的に目にするようになった装置だ。
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