聞いて、姉貴




「あぁ、つーかなんだよ突然?」


わざとらしく眉をしかめて姉貴を見る。

我ながら名演技だ。



瞬間、姉貴の表情が微かに柔らいだように見えた。

まるで何かから解放されたときのような。


スルッと肩を落とし、

「べ、別に…」

そう言って再び姿勢を正す。


そして、

「お母さん、パンもう一枚ちょうだい!」

清々しい顔でそう言った。



「…朝からよく食うな。それだから太るんだよ」


「うっさい!朝食べとけば集中できんの!」


「はいはい」






─…これで、良かったんだ。



ときに笑い合って、ときに憎まれ口をきいて。



そんな光景が、俺たちにはピッタリなんだ。






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