Five Minutes
ある朝…
「げ、なんだよコレ…」
ホームに滑り込んできた電車を見て、俊次くんは我が目を疑いました。
それは、いつもならやや空(す)いている八時五分発の電車が、どういうわけか今日に限ってメチャ混みだったからです。 電車内がいかにヒドイことになっているかは、俊次くんの目の前に停まった車両のドアガラスに、片頬をムギュウと押し付けられたまま身動きがとれないでいるオッサンがよく物語っていました。 ドアが開くと乗客たちは、まるでせき止めていた水が一気に流れ出たかのような勢いでホームに溢れ出て来ました。
窓にムギュウのオッサンも、その勢いに押されてホームに転がり出てきました。
そして。
「いてっ…!」 前に立っていた俊次くんの右の足を踏んづけたのです。
でも…。
オッサンは気付いているのか、いないのか、「すみません」も言わず、それどころか車内に戻ることが最優先課題と言わんばかりに、すぐさま既にギュウギュウ詰めの出入り口に向かって突進して行きました。
(このヤロウ…!)
俊次くんはカチンときました。
人の足踏んどいて、謝んねぇのかよ…。相手が大学生だと思って、ナメてんのか、コラ…。
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